佛頭像 北斉(紀元550~577年)
山東省は、孔子や孟子の出た、中国古代の経済・文化の中心地であった。又、約1,500年前、佛教が山東省に伝わり、中国佛教が高麗や日本に伝わる重要な架け橋となった土地でもある。この佛像は北斉を滅ぼした北周の武帝が中国史上[三武一宗廃佛]と称される、史上2番目の廃佛の詔書を発した際、破壊され土中に埋められたものが1,500年の年月を経て、中国佛教美術史上、最も美しい佛像群のある青州市博物館の北にある博興県で発見されたもので、約10年前、東魏佛・西魏佛を求めて小生が山東半島を仿偟した際、博興博物館で邂逅した思い出の佛像である。佛の表情は、悟りを開いた釈迦弁尼の澄み切った心境が、拝観する者に素直に伝わって来る、暖かく清謐な趣があり、暖房もない冷え切った展覧室で暫し時を忘れて立ち尽くした記憶がある。
Photo & Text by 吉村 信(福井市)