金剛手菩薩
アジャンター第1号石窟
(5世紀後半~600年頃)
インド、マハーラーシュトラ州にあるアジャンター石窟寺院は、数ある世界遺産の中でもトップクラスに挙げられる規模と内容を有する佛教遺跡で、その壮麗なる壁画は他の追随を許さない。小生は2回、4日間にわたって同地を訪れ、食事もせずに合計5,000枚に及ぶ写真を撮影した。今回は、それらの中から選りすぐった佛画・佛像を供覧し、アジャンター遺跡の素晴らしさを味わって頂こうと思う。
本画は、アジャンター石窟群の中で最も有名な第一号石窟の蓮華手菩薩の右手に、主尊の石造阿弥陀如来佛を護るかの様に描かれた金剛手菩薩で、黄金を用いて描かれた王冠の豪華絢爛さは東大寺三月堂の不空羂索観音の宝冠の比ではない。愁いを含んだ若々しい表情は、インドの多感な青年貴族の俤を写したものであろうか。
Photo & Text by 吉村 信(福井市)