獬豸(かいち)
後漢(22~220年) 山東省出土
漢代楊孚の『異物志』に、「北荒に獣がいる。名は獬豸、一角、善悪を区別する力があり、人に会うと戦う、悪人に触れる」という。古代神話伝説中の神獣である。鎮墓獣として、漢代の墓の入口左によく置かれている。本像は多角の様に見えるが、実際は一角で、頭頸部の毛が「怒髪天を衝く」の如く逆立ち、不正に対する怒りを見事に表現している。木製、陶製等、種々の獬豸を見てきたが、これほど写実的で力に溢れたものはなく、国家一級文物中でも最高の「獬豸」と思われる。土産として実物大のブロンズ像を購入したが、4.5kgもあり、持ち帰るのに難儀した。
Photo & Text by 吉村 信(福井市)